"Queendom"50号を記念して、EQFC会員によるクイーン全長編の人気投票を行ないました。ここではその結果を紹介します。

（投票者総数　40名）

創元推理文庫 48版	第１位 『ギリシャ棺の秘密』 （別題：ギリシア棺の謎） 投票数：36、平均点：90.50、標準偏差：7.69、発行年：32 ニューヨークのどまんなかに残された、古い墓地の地下室から発見された二つの死体。その謎を追うクイーンは、一度、二度、三度までも犯人に裏をかかれて、苦汁をなめるが、ついに四度目、あざやかに犯人に背負投げをくわせる。クイーンの最大長篇で、また代表作の一つである。大学を出てまもないクイーンが、いまだ当局の信頼を充分かち得ず、四面楚歌のなかで、つまずきにつまずきをくりかえしつつ犯人を追い詰めてゆく姿には悲壮味さえある。もちろん本邦初の全訳。 創元推理文庫『ギリシア棺の謎』より
創元推理文庫 68版	第２位 『Ｘの悲劇』 投票数：36、平均点：89.39、標準偏差：11.36、発行年：32 おりしも降り出した雨の中を進む満員の市電の中で、婚約披露をすませたばかりのウォール街の株式仲買人が殺された。凶器はポケットにはいっていた小さなコルク玉。これには恐ろしいニコチン液を塗った針が無数にささっていた。巧妙な密室犯罪である。容疑者は続々とあらわれたが、決め手がない。やがて第二の殺人がおこなわれた。被害者は先日の市電の車掌だった……。聾者の探偵、名優ドルリー・レーンの捜査は意外に、あざやかに進められる。本格推理小説の王者クイーンの四部作のトップを飾る名作！ 創元推理文庫『Ｘの悲劇』より
創元推理文庫 48版	第３位 『エジプト十字架の秘密』 （別題：エジプト十字架の謎） 投票数：37、平均点：88.35、標準偏差：9.03、発行年：32 Ｔの字型のエジプト十字架に、次々とはりつけにされて死んでいた小学校長、百万長者、快速船をあやつるスポーツマン、そして素性がわからない男の、四つの首なし死体。その秘密を知るものは四人しかない。エラリー・クイーンはついにさじを投げた。しかし、最後にいたって見つけた、たった一つのヨードチンキのびんから、もつれにもつれた事件の謎は快刀乱麻一挙に解決された。あらゆる近代の快速交通機関を利用しての四州にまたがり、550マイルにのぼるスリル満点の犯人の追跡。そして読者の前に突如として突き出された犯人は、はたしてなんぴとであったか？クイーンが会心の微笑をもらして読者に挑戦する快作の一つ。 創元推理文庫『エジプト十字架の謎』より
創元推理文庫 54版	第４位 『オランダ靴の秘密』 （別題：オランダ靴の謎） 投票数：33、平均点：87.24、標準偏差：9.22、発行年：31 オランダ記念病院の手術台にのせられた百万長者の老婦人は、白布をめくると、すでに針金で絞殺されて、死体となっていた。犯人は病院のどこかにひそんでいる？しかしエラリーの明智をもってしても、第二の殺人を防ぐことはできず、犯人はふたたびその凶手を外科医のうえに加えた……。第二部の終わりに作者から「読者への挑戦」が付されているように、本書は犯人あてのためのあらゆる手がかりが、フェアプレイで、事前に読者にあたえられている典型的な本格作品。その数学のように整然とした論理的構成は、推理小説ならではの醍醐味である。 創元推理文庫『オランダ靴の謎』より
創元推理文庫 69版	第５位 『Ｙの悲劇』 投票数：35、平均点：86.51、標準偏差：13.60、発行年：32 行方不明をつたえられた富豪ヨーク・ハッターの死体がニューヨークの湾口に揚がった。死因は溺死ではなく毒物死だった。発端の事件につづいて、そろいもそろって常軌を逸した病毒遺伝の一族のあいだに、目をおおうような惨劇がくり返される。名探偵レーンの推理によれば、犯人はある人物にまちがいなかった。しかし、その人物が現実の問題として犯人であることは不可能なのだ。このおそるべき矛盾は、いったいなにを意味するのか？エラリー・クイーンが、ロス名義で発表した四部作中の最大傑作で、その周到な伏線と明晰な解明の論理は、読者のすべてを魅了する。 創元推理文庫『Ｙの悲劇』より
創元推理文庫 43版	第６位 『フランス白粉の秘密』 （別題：フランス白粉の謎） 投票数：33、平均点：85.24、標準偏差：9.33、発行年：30 ニューヨーク五番街、流行のメッカにそびえる大百貨店”フレンチス”の展示室のなかから転がり出た女の死体──くちびるは半分しか紅が塗られていず、当人の持ち物でないスカーフと口紅棒を持っていた。その謎の口紅棒には、奇妙な白い粉がつめられている。社長のアパートの机の上に並ベられた奇妙な取りあわせの五冊の書物は、慧眼なクイーンに、意外なヘロイン密売団の存在を示唆する。クイーンがフェア・プレイをモットーとして、読者に挑戦した国名シリーズの第二冊目、彼の名を不朽にした出世作。 創元推理文庫『フランス白粉の謎』より
ハヤカワ・ミステリ文庫 2刷	第７位 『途中の家』 （別題：中途の家） 投票数：32、平均点：83.84、標準偏差：8.91、発行年：36 あばら家から女の悲鳴が聞え、一台の車が飛び出していった。義弟のジョゼフに会うためやってきた青年弁護士ビル・エンジェルが、その家の中で見たものは、胸を刺され虫の息となっている義弟の無残な姿だった。しかも、ビルの友人エラリイ・クイーンの手腕により、意外にも被害者が、ニューヨークとフィラデルフィアにそれぞれ妻を持つ重婚者であったことが暴露される。容疑はフィラデルフィアに住む妻にかかったが、果して被害者はどちらの人間として殺されたのか？読者への挑戦状を挿入し、自選ベスト3に選ばれた面目躍如たる迫力篇。 ハヤカワ・ミステリ文庫『途中の家』より
ハヤカワ・ミステリ文庫 18刷	第８位 『災厄の町』 投票数：37、平均点：83.54、標準偏差：11.59、発行年：42 結婚式の前日に姿を消して三年、突然ジムは戻ってきた。ひたすら彼の帰りを待ち続けた許婚のノーラは、何も訊かず、やがて二人は結婚して幸福な夫婦となった。そんなある日──ノーラは夫の読みさしの本の間から世にも奇怪な手紙を発見した。そこには夫の筆跡で、病状の悪化した妻の死を報らせる文面が……これは殺人計画か？こんなに愛している夫に、わたしは殺される……。美しく個性的な三人の娘を持つ旧家に起った不思議な毒殺事件。架空の町、ライツヴィルを舞台に、錯綜する謎と巧妙な奸計に挑戦するクイーンの名推理！ ハヤカワ・ミステリ文庫『災厄の町』より
ハヤカワ・ミステリ文庫 10刷	第９位 『十日間の不思議』 投票数：32、平均点：83.19、標準偏差：14.87、発行年：48 全身に傷を負い、血まみれの姿でエラリイ・クイーンのもとを訪れた旧友ハワード・ホーン。ライツヴィルの家を出てから19日間、ハワードの記憶は完全に失われていた。無意識のうちに殺人を犯していたかもしれない──戦慄したハワードは、エラリイにライツヴィルへの同行を頼んだ。しかし、エラリイがこの懐かしい街に着くのも待たず、不吉な事件は幕をあけた。正体不明の男から2万5000ドルでハワードの秘密を買えという脅迫電話がかかってきたのだ！架空の町ライツヴィルが三たびエラリイの前に投げだした怪事件の真相は……？ ハヤカワ・ミステリ文庫『十日間の不思議』より
創元推理文庫 41版	第１０位 『靴に棲む老婆』 （別題：生者と死者と） 投票数：36、平均点：82.36、標準偏差：12.18、発行年：43 「靴」の宮殿に住む百万長者の老婆の六人の子─三人は精神異常者で、三人はまとも。その正気な子供がつぎつぎと殺されて、しかも手を下して殺した殺人犯人は、真実の犯人ではないという、クイーン一流の精妙をきわめたプロット。クイーンの、転身第二期の作品中の、白眉とするに足る名作で、陰惨かぎりない雰囲気を、やわらかな童謡のユーモアでくるみ、一種独得の気品がにじみ出ている。クイーンの真価を問うに必読の名作！ 創元推理文庫『ギリシア棺の謎』より