第10回 『金田一少年の事件簿』とエラリー・クイーン
【解説】EQFC会誌「QUEENDOM」61号(2001年2月発行)にクイーンのラジオドラマ「私立探偵の冒険」を訳載した時に添えた穴埋め原稿。『金田一少年の事件簿』ファンのアクセスを期待して、このコーナーに再録しました。一部、手を入れています。
『金田一少年の事件簿』とエラリー・クイーン
By EQIII
ネヴィンズJr.のクイーン研究書によると、クイーンが脚本を書いたラジオドラマ「エラリー・クイーンの冒険」(1939〜1948)は、当時、かなりの人気番組だったそうです。このラジオドラマが放送当時に巻き起こしたブームについて、現在の日本人である私などには、どうもピンとこなかったのですが、最近になって、思いついたことがあります。
――ひょっとしたら、クイーンのラジオドラマは、漫画の世界における『金田一少年の事件簿』みたいなものではなかったのでしょうか?
『金田一少年』は、『ドラゴンボール』といった作品ほどヒットした漫画ではありませんが、本格ミステリー漫画としては、最初にして最大の成功例になります。漫画は小説の何十倍も売れていますので、本格ミステリー小説の何十倍もの読者が『金田一少年』を読んだということになります。つまり、『金田一少年』で本格ミステリーを初めて知り、その楽しみ方を学んだという読者が、かなりいるというわけですね。他の漫画と違って、『金田一少年』には、雑誌の発売日までに推理をするという楽しみがありますが、この「推理する楽しみ」を漫画しか読まない読者に教えたのは、まぎれもなく『金田一少年』でしょう。それだけでなく、島田荘司の『占星術殺人事件』のトリックを『金田一少年』の方で知った読者の方が圧倒的に多いことからもわかる通り、トリックの知識も与えているわけです。さらに、漫画ならではのユニークなトリックが出てくる点も、注目すべきでしょう。
クイーンのラジオドラマも、これと同じです。「シャドウ」といった作品ほど大ヒットしたわけではないですが、本格ミステリーのラジオドラマとしては、最初にして最大の成功例になります。ラジオの聴取者は小説の読者の何百倍もいますので、本格ミステリー小説の何百倍もの人がクイーン劇場を聴いたということになります。つまり、クイーン劇場で本格ミステリーを初めて知り、その楽しみ方を学んだというアメリカ人が、かなりいるというわけですね。他のラジオドラマと違って、クイーン劇場には、問題編の後のCM中に家族みんなで推理するという楽しみがありますが、この「推理する楽しみ」をミステリー小説を読まないアメリカ人に教えたのは、まぎれもなくクイーン劇場でしょう。それだけでなく、チェスタートンの「見えない人」やグロルラーの「奇妙な跡」といった古典名作のトリックをアレンジして使うことにより、トリックの知識も与えているわけです。さらに、ラジオならではのユニークなトリックが出てくる点も、注目すべきでしょう。
もう一つ興味深い類似は、どちらもワトソン役を女の子が演じ、彼女と名探偵の軽いラブロマンスが、味付けに使われている点です。事件の関係者である美女と名探偵が仲良くするのを見た女の子がやきもちをやく。あるいは逆に、事件の関係者である美男子と女の子が仲良くするのを見た名探偵がやきもちをやく……。これは偶然の一致でしょうか? 『金田一少年』の方は、それも人気の一因だそうですが、では、エラリーとニッキー・ポーターの方は、どうだったのでしょうか? 会誌61号に訳載したクイーンのラジオドラマ「私立探偵の冒険」に出て来る私立探偵カム・クラブとニッキー・ポーターとエラリー・クイーンの三角関係を読む限りでは、こちらも……。
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