第14回 ここが違うぞ、『エラリー・クイーンPerfect Guide』と
『エラリー・クイーン パーフェクトガイド』

ここが違うぞ、『エラリー・クイーンPerfect Guide』と『エラリー・クイーン パーフェクトガイド』by 飯城勇三

 ぶんか社より2004年12月にムック形式で出た『エラリー・クイーンPerfect Guide』(飯城勇三編著・EQFC協力)、は、好評につき、早くも2005年12月に『エラリー・クイーン パーフェクトガイド』という題で、ぶんか社文庫化されました。――しかし、実際は文庫化ではありません。文庫収録にあたって大幅な改訂を行ったため、もはや別物に変わっているのです(高村薫みたいだ……)。あの本には、どこにも「文庫化」と書いていませんよね?
 とは言うものの、ムック版と重なる部分も多いので、ムック版を購入済みの人は、買うべきかどうか迷うと思います。また、いずれも未購入の人は、ムック版と文庫版のどちらを買えばいいか迷うでしょうね。
 そこで、2つの本の違いを挙げておきます。(もちろん、ベストチョイスは「両方買う」ですよ!)

《文庫版で追加されたもの》

 @巻頭カラーページ(4p)で、クイーン聖典の原書初刊本ジャケットを全点掲載しています。
 A第一部に芦辺拓のエッセイ「セルロイドの国の名探偵と仲間たち」を追加。クイーンのモノクロ映画を紹介したこの文は、文庫版のための書き下ろしです。
 B作品ガイドの『間違いの悲劇』関連を、創元の邦訳に合わせて大幅に修正しました。
 C作品ガイドに2005年に本国で出たラジオドラマ集『殺された蛾の冒険』の紹介を追加。収録作の既訳の有無にも触れています。
 D第二部のアンケート回答に、天城一、有栖川有栖、笠井潔、光原百合の四氏を追加。いずれも興味深い内容です。
 E第二部の〈海外諸氏のクイーン作品ベスト〉に、E・D・ホックとD・G・グリーンの選が追加されています。特にホックはファン必読です。
 F「第三部 エラリー・クイーンの挑戦と好み」を追加。2篇の本邦初訳短編(挑戦状付き!)と、「ミステリー・リーグ」誌掲載の幻のエッセイ「クイーン好み」で、計77ページ。短編はラジオドラマの小説化ですが、アメリカで出たラジオドラマ集にも収録されていない、レア作品です。
 Gムック版刊行後のクイーン情報を盛り込んでいます。
 ・『エラリー・クイーンの国際事件簿』や『間違いの悲劇』の邦訳。
 ・「ジャーロ」誌や「ミステリーズ!」誌のクイーン特集。
 ・『ニッポン硬貨の謎』(北村薫)や『デカルトの密室』(瀬名秀明)や『探偵小説と二〇世紀精神』(笠井潔)や『法月綸太郎の本格ミステリ・アンソロジー』といった関連本。
 ・ミステリチャンネルでのTVシリーズ「エラリー・クイーン」の放映。
 ・本国版EQMMの一年にわたるクイーン特集(クイーンファンに日米問題なし!)。
 ・中国で刊行されたクイーン生誕百年記念本(クイーンファンに日中問題なし!)。

《文庫版でカットされたもの》

 @漫画家のJETによるインパクトのある表紙。
 A序文に添えられた「あなたのエラリー・クイーン度チェック」。
 B作品ガイドに添えられた描き下ろしショート・コミック。
 Cキャラクター名鑑や他の記事に添えられた描き下ろしイラスト。
 D「異色作・怪作12作」の作品ガイドに添えられた名文句。
 Eアメコミ版クイーン「荒れ狂う墓」。これは文庫サイズに収まらないためにカットしましたが、実に面白いマンガです。
 F日米英以外のクイーン本の書影を24点並べた「世界のクイーン本紹介」コーナー。


 さて、あなたはどちらが好みですか?(「両方嫌い」という回答は却下)


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